人とコミュニケーションをとるのが難しい
目次
社会的コミュニケーションについて
人とうまくコミュニケーションが取れないと悩む人は実は少なくありません。
コミュニケーションというものは一人で行うものではなく、社会的、すなわち相手との交流をしようとするなかで生じるものです。またコミュニケーションというものは言葉だけではなく、その言葉をのせて話すときの抑揚、表情、話し方、それを伝える場面や文脈といったものにも左右されるものです。そのため、同じ言葉を言っても、その言い方、タイミングや場面によっては、相手が怒ったり、喜んだりするケースというのもあり得るのです。
社会的コミュニケーションの障害というものは、その本人さんがわが抱える問題がありえるのは確かですが、大事なのは、本人さんがどういう場面でそれをコミュニケーションの問題が生じたかを具体的に掘り起こしていくことであると考えます。
架空ケースでみるコミュニケーションの問題
実在の例ではありませんが、よくみられる悩み事を架空のケースとしてお示しします。
このような症状に仮に当てはまっても、当てはまらなかったとしても、ひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。
ケース1
#コミュニケーションがとれない #疲労感 #眠れない
大学生の○○さん(仮名)は幼いころから少し変わった子として周りからみられていました。
何か悪さをするということではなく、みんなで遊んでいる場でも、みんなに合わせることなくひとり遊びを続けていたり、どんな相手に対しても敬語を使っていたりしていたからです。
友だち同士の会話中にもいきなりやってきて、自分の興味ある話題をまくしたて、満足したらそのまま立ち去ってしまうこともありました。周りもそれを特に何か思うわけではなく、ごく限られた友人とそれなりの人付き合いが続いていました。
大学に入ってアルバイトをすることになり、接客業務に配置されてからというものの、上司から客とのコミュニケーションができていないことを叱られることが増え、「もっと相手が何を考えているか想像して動いて」と指示をされますが、あまりしっくりせず仕事を苦に思っています。
家でもそのことを考える時間が増え、どんどんと疲労感がたまって、ついには夜も眠れなくなってきました。
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ケース2
#コミュニケーションがとれない #不安・恐怖
大学生の○○さん(仮名)はゼミでの発表を来週に控えていますが、そのことを思うと気が気ではありません。
もともと人前での発表は苦手というレベルではなく、手が震えて汗だくになり、声も絶え絶え、まともに話せた経験はありません。普段の様子からすると想像がつかないので、周囲からは「下を見ながら話せば」「聴衆はぬいぐるみだと思えばいいよ」「結構みんな緊張するものだよ」などとよくあるアドバイスをされますが、それも全く受け入れられません。
高校生の時の課題研究の発表では、小グループの数人の中だけであったのにも関わらず、ドキドキと息苦しさ、胸の痛みが出てきたために、発表前に先生に心配され、救急車を呼ばれたこともありました。
今回はそうならないように…と思えば思うほど緊張感は高まり、夜もあまり眠れていません。
ケース3
#コミュニケーションがとれない #不安・恐怖
小学校に入ったばかりの○○さん(仮名)は、家では両親とも何の問題もなく世間話をすることができ、育児の面でも手がかかったという印象のない子供でした。
学校のことを聞いてみても「べつに。何も」という具合であり、行くこと自体を嫌がるわけでもなかったため親も気にすることはありませんでした。
あるとき学校の教師から連絡があり、新学年が始まってからというもの、教師や同級生とはまったく話をすることもなく過ごしており、話しかけられてもすぐに下を向いてしまったり、その場から離れてしまって交流が全くできないことの相談がありました。親にとっては全くの寝耳に水の話で、家での様子を教師に伝えると先方もびっくりしている様子でした。
本人にさりげなく聞いてみてもやはり誰かと喋らなくても学校は行きたい、いやではないという調子なので、どのように見守っていけばいいのか、悩んでいます。
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コミュニケーションの問題を認める代表的な疾患
上で述べた通りコミュニケーションの問題はさまざまな精神疾患のいち症状として出現するため、どの疾患の症状として出現しても不思議ではないかもしれません。
ここでは、コミュニケーションの問題がその精神疾患の特徴となりえるものの例を一部ご紹介します。
気分変動が主症状になる精神疾患の例
自閉スペクトラム症 | 社会的(語用論的)コミュニケーション障害 |
不安や恐怖などのため二次的に交流ができなくなることのある精神疾患の例
場面緘黙(かん黙) | 社交不安症 |
対人恐怖症 | 自己臭恐怖 |
心的外傷後ストレス障害(とくにPTSD) | パーソナリティ障害 |