物忘れが多い
目次
物忘れについて
なにかをずっと覚えていられるというひとはいません。ちょっとしたことであれば翌朝には、忘れていることもあります。大事なことでもうっかりしていると忘れることもあります。忘却という機能はそれ自体が異常というわけではありません。
それでは記憶の障害というものはどう考えればよいでしょうか。
大きな器に水を入れることを考えるとき、器が記憶する用量、水が記憶するモノゴトと考えるとわかりやすいと思います。
若いとき、記憶に障害のない時にはこの器はとても大きく、水をどんどん入れてもなかなかこぼれません。ただし、ときどき入れそこねて外にこぼしてしまいます(うっかり忘れ)。
老化するとともに器がどんどん小さくなっていくので、入る水の量も、入れ損ねてこぼれる頻度も増えてきます。これは正常な老化でも起きてくることです。
これが認知症になってくると、器が小さくなっていくことに加えて、器の入り口がどんどんと狭くなってきます。
もともと入っていた中の水は抜けにくいですが、その量も少ない。そして新しく入る水も、入り口が狭いせいで入りにくくなってきます。
そして老化に伴って、器の底の方に少しずつひび割れがでてきて、横から水が漏れていきやすくはなるのですが、認知症進行に伴ってそれがどんどんひどくなってきます。
このようにして新しい水が入りにくい、器の大きさも小さい、横からどんどん水漏れしていく、という状況が認知症の進行期であるといえます。
架空ケースでみる具体的な症状
実在の例ではありませんが、よくみられる悩み事を架空のケースとしてお示しします。
このような症状に仮に当てはまっても、当てはまらなかったとしても、ひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。
ケース1
#物忘れが激しい
70歳台の○○さん(仮名)は仕事を定年退職して以降は、ときに友人の誘いに応じて外出はするものの、家にこもりがちの生活になりました。
もともと記憶力には自信があったつもりでしたが、2-3年前ごろより同居している子に物忘れを指摘されるようになりました。
内容は些細なことではありましたが、前日に自分がお願いしていたことを忘れる、買い物で同じものを買ってきてしまうといったことが時折みられ、「年だからしかたないか」と笑っていました。
先日、近くのコンビニに買い物に行った際に帰りが遅いことを心配した家族が探しに出たところ、道に迷って家とは反対側の数キロ離れた場所で警察に保護されていることがわかり、いよいよ周囲もあらためて心配しだしましたが、本人はまだ大丈夫だよというのでどうしたらいいかと家族は悩んでいます。
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ケース2
#身体症状の悩み #おなかの症状
60歳台の○○さん(仮名)は、先日家の大掃除をみんなでしているときに足を引っかけて派手に転んでしまいました。
足をくじいて頭を打ったものの、幸いその場では大きなケガはなさそうで、家族も一安心でした。
それから2週間後、くじいた足はもう治っていたものの歩きづらそうにしており、この数日はトイレを失敗することも増え、尿失禁でズボンを濡らしてしまいます。家族が尋ねても「何だかよくわからない」と話していました。
詳しく聞くとそもそも転倒していたことも忘れており、最近の食事内容、前日に孫が来ていたことなども覚えておらず、家族は「認知症が急に進行するとは」とびっくりしています。
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ケース3
#物忘れが激しい
50歳代後半の○○さん(仮名)は、最近会社での会話についていけないことが増えました。
「16時からの会議が~」という話をされても「カイギってなんですか?」と言葉そのものの意味を忘れてしまっている様子ですが、日常生活には支障が無いようで、通勤も普段通りできていました。
会話をするとその内容の理解ができず、話始めるとその内容はだんだんと支離滅裂になってしまって収拾がつかなくなってきます。
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物忘れを認める代表的な疾患
上で述べた通り物忘れはさまざまな認知症をはじめとする疾患のいち症状として出現するため、注意が必要です。
ここではまず、不安がその精神疾患の特徴となりえるものの例を一部ご紹介します。
認知症性疾患の一例
正常な加齢 | アルツハイマー型認知症 |
レビー小体型認知症 | 前頭側頭型認知症、意味性認知症 |
血管性認知症 |
また、認知症は一般的に進行疾患とされ、有効な治療薬はいまだ無い状況でありますが、認知症の症状に似たような症状を認めるが、早期介入すればその症状を改善しうる病態として「treatable dementia (治療可能な認知症)」というものが知られています。
Treatable dementia(治療可能な認知症)の例
慢性硬膜下血腫 | 正常圧水頭症 |
甲状腺機能低下症(橋本病) | ビタミンB1欠乏症 |
ビタミンB12欠乏症 | 傍腫瘍性神経症候群 |
脳炎 | 薬剤性 |