気が散ってミスが目立つ
目次
不注意について
「何かに注意を向ける」「注意散漫で忘れ物ばかり」というように、注意という言葉は日常の中でもよく使われる、認知機能の基盤をなす重要なもののひとつです。
人ごみの中で会話をしていても、周りの雑音が多少うるさくても、相手の声を聞き取ることができます。
そして、雑踏の向こうで自分の名前が聴こえたときにはそれまでは気になっていなかったのに「おや?」と振向くこともできるかもしれません。
一方で、通勤途中にあった建物を毎日かならず視界に入れていたとしても、急に取り壊しになり工事中になったとしたら「あれ、前にここにあったのは何だったのだろう?」となることも経験があると思います。
このように注意というのは、視覚や聴覚などから得られた膨大な情報を取捨選択する機能のことで、選択した情報を優先的に維持し、選択しなかった情報を抑制し頭に上がらないようにしていくといったとても複雑なはたらきをしています。
ケースで見る不注意
実在の例ではありませんが、よくみられる悩み事を架空のケースとしてお示しします。
このような症状に仮に当てはまっても、当てはまらなかったとしても、ひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。
ケース1
#気が散ってミスが目立つ #落ち着くのが苦手
小学1年生の○○くん(仮名)は赤ちゃんだったころから夜はあまり寝ない子でした。健診のときには落ち着きがないとは言われていましたが、とくに受診を促されることもありませんでした。
幼稚園に入ってからは友達もたくさんできましたが、欲しいおもちゃをすぐにとってしまってけんかになることも多く、みんなが座って何かをしているときにも一緒に座れず走り回っていました。
小学校にはいってからも授業中は怒られるから最初のうちは頑張って座っているものの、そわそわが始まり、「びんぼうゆすり」をしながら前や横の友達にちょっかいをかけ、先生に怒られることを繰り返しています。
プリントの宿題も、気に入って最初は取り組もうとするのですが、繰り返して何かを書くのが苦手で、途中で違うことを書いてしまったり、飽きて落書きをはじめたり、遠くの友達の声に反応してそっちへ行こうとしたりと忙しい状態です。
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ケース2
#気が散ってミスが目立つ #眠れない
40歳代の〇〇さん(仮名)は40歳を過ぎてから体重が増えてしまい肥満傾向として、健診でもよく指摘されています。
睡眠も浅くなり、日中の眠気も強すぎることが増え、コーヒーを飲むなどして頑張っていましたがやはり倦怠感も強い状態です。
近くの内科を受診した際に睡眠薬を処方され服用しましたが、むしろ余計に途中で起きてしまうことも増え、体調は戻る気配がありません。
イライラして、頭も回らず、仕事の書類作成をしている時にもまったく集中できず、気が散ってミスが目立つようになってきました。自分では不眠症ではなく、もしかすると「うつ」かもしれないと考えだしています。
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ケース3
#気が散ってミスが目立つ #不安だ
20歳台の○○さん(仮名)は日々いろいろな不安にさいなまれています。仕事をするにも「作成した書類を酷評されたらどうしよう」「電車が止まって遅刻したらどうしよう」「待ち合わせ時間をきちんとメモできていただろうか」などのように留まるところを知りません。胃腸の具合もそれに呼応して悪くなりますし、緊張感もつよくいつも気が立っている状態です。
そのせいか、日中は落ち着きなく、そわそわして、言われたこともつい聞き落としてしまうなどミスも目立つため、余計にまたちゃんとしないと…と不安になるという悪循環が生じています。
もともとその傾向はありましたが、最近は特にひどく、このままでは就労を継続するのも危ぶまれるのではないかと気が気でなりません。
注意の問題を認める代表的な疾患
上で述べた通り注意の障害はさまざまな精神疾患のいち症状として出現するため、どの疾患の症状として出現しても不思議ではないかもしれません。
ここではまず、注意障害の症状がその精神疾患の特徴となりえるものの例を一部ご紹介します。