何をしても楽しくない
目次
「何をしても楽しくない」
「何をしても楽しくない」という訴えは精神科の外来に来られる患者さんの中でよくみられる訴えになります。
良いことがあった際に楽しい気持ちになり、嫌なことがあった時に不快な気持ちになるのは自然なことでありますが、いろいろな精神疾患の経過の中では、そういった正常な感情の反応を示すことができなくなるケースがあります。
通常楽しめることが楽しめないという状態から、あるいは悲しいという感情すら実感できない状態までさまざまありえます。
ケースでみる感情の病的減退の症状
実在の例ではありませんが、よくみられる悩み事を架空のケースとしてお示しします。
このような症状に仮に当てはまっても、当てはまらなかったとしても、ひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。
ケース1
#何をしても楽しくない #うつな気分 #体の不調
40歳代後半の○○さん(仮名)は生来健康で仕事にも家事にも全力で取り組む信頼のあつい人で、まわりからも一目を置かれている人でした。
40歳を過ぎてからは体力の衰えを感じてはいましたがこれまで以上に一生懸命仕事に打ち込んでいましたが、1年前に新たに役職が上がり中間管理職として上司と若手の世話を一手に担うようになってからは、体の不調をどんどん感じるようになりました。
検査をしても異常は見当たらず、上司も気を使って業務量を少し減らしてあげたりしますが、ついに最近はほとんど眠れず、気も焦るばかりです。
趣味を楽しむ余裕がないのもそうでしたが、この1週間は焦りや悲しいといったことすらも言わなくなり、無表情でぼうっと座っているような時間を過ごしています。
「もう取り返しがつかない。私のせいでお金も稼げず、一家は崩壊する」とぶつぶつつぶやくばかりで病院にも行こうとせず家族は途方に暮れています。
ケース2
#何をしても楽しくない #フラッシュバック #トラウマ
30歳台の○○さん(仮名)は、会社帰りの横断歩道で信号無視の車にはねられ、頭を強く打ち一時生死の境をさまよいました。
入院期間中は不眠と体の痛みに苦しめられる以外はべつだん困ったことは無かったように思いましたが、退院後も不眠は続き、寝たとしても事故のときの悪夢を繰り返すようになりました。
通勤再開初日、途中の横断歩道を渡るときには動悸がやまず、引き返してしまいました。
頭痛もあまりよくならず、日常生活でも家族がサポートしてはくれますが、些細なことでイライラしてしまい、何をしても楽しいとも思えず、時折はねられる瞬間のことが頭に急に思い出されては、家にいてもうろたえてしまってうずくまってしまいます。
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ケース3
#何をしても楽しくない #危険ドラッグ #薬物乱用
40歳台の○○さん(仮名)は、18歳ごろから友人の勧めで安価のストリートドラッグの使用をはじめました。
中味についてはよくわからないまま使っていましたが、使うと気分が落ち着いたので次第に常用しだしました。
20歳のときに一度バッドトリップを経験してからは大麻に移行し、それ以降は離脱などの症状もなく使用できていました。ところがこの1-2年は、大麻を使用した後もなぜか効き目が弱くなったように感じます。
日常生活にも張り合いが無くなってしまい、何もやる気が起きず、身の回りのことをさぼりがちになりました。
最近では会社に行っても頭が回らず、仕事にならず叱責されることが増えてきました。
楽しい、悲しい、といった感情と無縁になってしまったようで、自分でもこのやる気のなさは病気ではないかと内科の病院へ通い詰めていますが、特に何も病気は見つかりません。
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