食べられない
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「食べられない」について
本来的に、「食べられない」という訴えは身体的・生理的なものであり、ウイルス性胃腸炎で吐き下しをしているために食べられない、ガンのために抗がん剤治療をしており食欲がそもそもわかず食べられないといったようにその背景に精神的なもの以外を想定する必要がある病態です。
あるいは、家ネコがちょっとしたタイミングで逃げ出してしまい迷子になっている、恋人と諍いをして数日間連絡が取れなくなった、などといった日常に起こりうる出来事のなかでも食事がのどを通らない(食べられない)経験をしたことがあるひともいるでしょう。
こういった心理的なことが背景となって食べられなくなることも多くの人が経験することだと思われます。
このように「食べられない」という状態は様々な背景を包摂した状態像であるといえますが、食事を摂らない状態になってしまっている背景として、精神疾患が関与していることがあります。
ケースで見る「食べられない」
実在の例ではありませんが、よくみられる悩み事を架空のケースとしてお示しします。
このような症状に仮に当てはまっても、当てはまらなかったとしても、ひとりで悩まず、まずは一度ご相談ください。
ケース1
#食べられない #不安・怖い #眠れない #気分が晴れない
20歳台前半の○○さん(仮名)は会社の新しい部署に移って2か月たちましたが、以前と比べて明らかに体調が悪くなっています。
残業が増えたこともありますが、直属の上司がすぐに怒って怒鳴り声をあげるタイプで、職場の中の雰囲気が悪くなってしまったことが一番ストレスに感じています。
最初のうちはその上司の文句を言ったりしながら同僚と愚痴をこぼすこともありましたが、最近ではそういうこともする元気がありません。
あまり食欲もわかず、休みの日にも仕事のことが頭に浮かび、資料の準備をしながら「週明けにきっと怒鳴られるのだろう」と不安になり、そう思うだけで胸がどきどきして息苦しくなって、あまりリラックスできる時間もありません。
体調をくずしがちで、仕事場でもよくおなかを下しています。夜の睡眠はとても浅く、疲れて寝ても夜中に何度も目が覚め、悪夢も繰り返しています。朝はなんとか遅刻しないように起きますが、休めた感覚もなく、いずれ限界が来そうです。
ケース2
#食べられない #学校に行けない
小学生の○○さん(仮名)は、もとから心配性なところがあるなと両親や周りからも思われているお子さんでした。
学校行事でみんなでバスに乗っている最中の車内で、ご飯をたくさん食べたせいか、それとも緊張していたためか、気分が悪くなってしまい、結果的にバスを途中で止めて道端で吐いてしまいました。
学校の先生はむしろ「よく我慢できたね」と思い本人をいたわりましたし、級友も特にそのことに関して何も思うこともなかったのですが、本人は遠足の旅程を自分が止めてしまったこと、皆の前で吐いてしまったことをとても気に病み、遠足以降は「学校に行きたくない」と親に言い、家にこもりきりになってすでに1カ月ほど経っています
「あまり食べるとまた吐いてしまうから」と食事量も減って、吐くことを怖がるあまり食事もゆっくりになってしまっており親も学校の先生も心配しています。
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ケース3
#食べられない
高校生の○○さん(仮名)は、友人とSNSのインフルエンサーのすすめるダイエット法に一緒にチャレンジすることにしました。
ちょうど交際している彼氏から、「少しやせた方がいいんじゃない?」と言われてカチンときていたのでちょうど良いタイミングだと考えました。
ダイエット開始後、早々に友人はあきらめてしまったのですが、凝り性の○○さんは突き詰めて食事量を減らし、運動をこつこつ続けました。
もともと肥満体型でもなかったのですが、3か月後には誰が見てもダイエット成功と言えるほどの体重となり周りも賞賛の嵐だったのですが、自分では満足できません。
色々情報収集する中で、流行りの方法としてのやせ薬のオンラインでの購入、さらなる断食期間の設定をはじめ、周りからは少し痩せすぎではないかと心配されるようになりました。
体重は半年で10kg以上減り、BMIも14ほどしかありませんが太ももや首回りが気になりついにはちょっとした食事後にも下剤を飲みだし、それが止められなくなりました。両親ももともとはダイエットを応援していましたが、ガリガリになった本人を前に何と言っていいのかわからなくなっています。
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ケース4
#食べられない
50歳台の○○さん(仮名)は階段からの転倒で足を骨折し、そのまま入院になりました。
入院後「毒を混ぜられているから何もいりません」と食事もくすりも拒否します。持参していた薬と、自分で指定したコンビニでのスナック菓子しか食べないと言い張ります。
もともと近隣との交流は全くない人で家族もおらず、○○さんのことを知る人はいないのですが、どうやら話を聞くと何十年も前から、「水道の水やスーパーでの食材には毒がひそかに混ぜられていると知ってしまった」ために自分で厳選した特定の飲食物や薬しかとらないようになっており、近所の人や病院の医師も自分に毒を飲ませて殺してしまおうと企んでいる結社の一員であると考えている様子でした。
痛みはあるが入院をしていることには納得がいっておらず、這いずってでも帰るというので病院の主治医の先生や看護師は困っています。
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